
01. 留学先の決定
医師の留学には,大きく分けて臨床留学と研究留学があります.前者は留学先で診療行為を行い新しい治療技術などを勉強するための留学で,後者は実際に患者を診ることがない研究目的の留学です.臨床留学するには,留学先での医師免許を持っている必要があります.アメリカの場合,USMLE(以前はECFMG)という試験を受けなければなりません.最近アメリカは海外からの医師の流入を規制しているため,試験に合格するのはかなり困難です.
ところで,この試験に合格し,ロチェスターで放射線科のレジデントをやっている同級生が一人います.彼女(!)は,大学卒業後,沖縄の米海軍病院での1年間の研修中にUSMLEを取得しました.
さて,私の場合,臨床留学にも興味がありましたが,試験勉強をするだけの根性も時間もなく,大学院で心エコーの研究をしたことから研究留学への道を選びました.ちょうど上司であったT先生が,クリーブランドクリニックに留学していました.クリーブランドクリニックといえば心エコー業界では有名どころで留学先としては申し分ありません.クリーブランドクリニックを留学先として選択するに際し,有利だと考えたのは,
1) 前任者がいること.
情報が豊富,生活のセットアップが楽,仕事が引き継げる.
2) クリーブランドクリニックは,心エコー業界では超有名どころ.
研究内容も,今までやってきたことが引き続いてやれそうであった.特に,得意とする組織ドプラ法や,ずっとやってきたドプラ法による左室拡張機能や左房機能に関する研究ができそうであった.
3) 前任者の仕事を引き継げば,給与がもらえる可能性がある.
T先生がNIHのグラントをもっており,更新時に僕の名前に差し替えてもらえそうであった.
4) クリーブランドは,住むにはよさそう.
クリーブランド以外に心エコーで有名な所と言えば,メイヨー.特に砂漠の中のメイヨーと比べると,クリーブランドは自然が多くてよいところと思った.また,サンディエゴやカリフォルニアなど西海岸に留学すればおそらく毎日ビーチで遊んでしまうので,冬の間何もできない環境の方が自分の留学にはあっている気がした.
5) 何回か見学したが,ラボの環境は悪くなさそう.エコーの装置も,問題ない.Fellowもよい人が多いみたいだった.
アメリカに学会にいくたび,クリニックによっていたので,Research Fellowたちと留学前から友達になれた.
6) 給料は出なくても,医療保険は家族の分までクリニックがカバーしてくれること.
ふつうの大学病院では,そうはいかない.メイヨーも医療保険は自費らしい.クリニックでは子供が作れるが,メイヨーでは無理,という話を聞いたことがある.
7) 医学部時代に仲のよかった同級生が,たまたまクリーブランドクリニックに留学していることが分かった.
彼は卒後,横浜市大の整形外科に入局したため,同級生の結婚式で年に1度会う程度だったが,こんなところにきているとは驚いた.
8) 東芝社のエコー装置がある
徳島大学で研究に使っていた東芝の心エコー装置があり,もし留学することになったら,徳島大学で開発していた特別なソフトウェアを,クリニックの装置にインストールしてもらえる約束ができた.とりあえず,何もなくても,東芝を使った仕事はできそうだった.
逆に心配だったのは,
1) 南国生まれ,南国育ちの自分が,激寒のクリーブランドで生きていけるかどうか.
2) クリーブランドクリニックは,あまりにも大きい施設なので,ほっておかれる可能性があったこと.どちらかといいうと,田舎のラボの方が,懇切丁寧に面倒を見てくれそう.
でした.結局,もうお分かりのように利点のほうがかなり大きかったため,留学先は,クリーブランドクリニックに決定されました. |